目次
前提
01条件を組む前に、目的を1つに決める
スクリーニングで最初につまずくのは、条件の設定ではなく目的の不在です。「良い銘柄を探したい」という漠然とした目的だと、割安の条件と成長の条件を同時に入れてしまい、結果が0件になります。割安株と高成長株は、そもそも両立しにくい性質を持っているためです。
そこで、スクリーニングを回す前に目的を1つに決めます。割安な銘柄を探すのか、成長している銘柄を探すのか、配当を重視するのか、小型で伸びしろのある銘柄を探すのか。目的が決まれば、使う条件は自然に3〜4個に絞られます。
条件は少ないほうが扱いやすい、というのが実務的な結論です。条件を3つに絞って30〜50件に落とし、そこから個別に見ていく。この件数が、1人で確認できる現実的な上限です。

結果が0件になったら条件を1つずつ外し、500件以上残ったら条件を1つ足す。この調整を数回繰り返して30〜50件に着地させるのが、実務的なスクリーニングの回し方です。
条件例
02目的別のスクリーニング条件設定例
目的別に、よく使われる条件の組み合わせを整理します。数値はあくまで出発点で、市場環境や業種によって調整が必要です。そのまま使うのではなく、結果の件数を見ながら自分で動かしてください。
重要なのは、どの目的でも「時価総額」と「売買代金」の下限を入れることです。時価総額が極端に小さい銘柄や、1日の売買代金がごく僅かな銘柄は、買えても売れないことがあります。流動性のフィルターは、目的にかかわらず入れておくのが安全です。
| 目的 | 主な条件 | 見たいこと |
|---|---|---|
| 割安株を探す | PBR 1倍未満/PER 業種平均以下/自己資本比率 50%以上 | 資産や利益に対して株価が低く評価されている銘柄 |
| 成長株を探す | 売上高成長率 前年比10%以上(3期連続)/営業利益率 改善傾向 | 事業が継続的に拡大している銘柄 |
| 配当を重視する | 配当利回り 3%以上/配当性向 30〜60%/連続増配 3年以上 | 無理のない範囲で配当を出し続けている銘柄 |
| 小型で伸びしろを探す | 時価総額 300億円以下/売上高成長率 20%以上/オーナー経営 | 規模がまだ小さく、成長余地の大きい銘柄 |
| 全目的共通 | 時価総額 100億円以上/平均売買代金 1億円以上 | 買えても売れない、を避けるための流動性フィルター |
PBR1倍未満は「割安」と言われますが、業績が悪化し続けている企業も同じ条件に該当します。割安なのではなく、市場が将来の価値を低く見積もっている場合があります。PBRだけで判断しないでください。
指標
03よく使う指標の意味と、使うときの注意点
スクリーニングで使う指標は多くありません。それぞれの意味と、どこで誤解しやすいかを押さえておけば十分です。特に重要なのは、指標の適正水準は業種によってまったく違うという点です。
たとえばPERは、成長期待の高いIT・ソフトウェア業種では30倍を超えることが珍しくない一方、成熟した銀行や商社では10倍前後が普通です。全市場一律で「PER15倍以下」と条件を切ると、成長企業がすべて除外され、特定の業種だけが並ぶ歪んだ結果になります。業種内で相対比較するのが正しい使い方です。
| 指標 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| PER(株価収益率) | 株価が1株利益の何倍か。利益に対する株価の水準 | 業種で適正水準が大きく違う。一時的な特別損益で歪む |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価が1株純資産の何倍か。資産に対する株価の水準 | 1倍未満は割安とは限らない。資産の中身と収益性を見る |
| ROE(自己資本利益率) | 自己資本をどれだけ効率的に利益に変えているか | 借入を増やすと自己資本が減り、ROEは見かけ上上がる |
| 営業利益率 | 売上に対する本業の利益の割合。事業の収益力 | 業種差が非常に大きい。同業内で比較する |
| 自己資本比率 | 総資産に占める自己資本の割合。財務の安全性 | 高ければ良いとは限らない。資本効率とのバランス |
| 売買代金 | 1日にどれだけ売買されているか。流動性の目安 | 低いと約定しにくく、売りたいときに売れない |
絞り込んだ後
04スクリーニングは候補を出す作業。選ぶのはその後
スクリーニングで30〜50件に絞り込んだら、そこからが本番です。条件に合致したという事実は、その銘柄が良いという意味ではありません。条件はあくまで数値の足切りであり、事業の中身や直近の状況は反映されていません。
1件ずつ、次の4点を確認します。①何の会社か(セグメント別の売上・利益構成)、②なぜこの数値になっているのか(一時的な要因ではないか)、③直近の材料(決算、適時開示、ニュース)、④同業他社と比べてどうか。ここで多くの銘柄が候補から外れます。
特に②が重要です。PERが極端に低い銘柄は、特別利益で一時的に純利益が膨らんでいるだけかもしれません。ROEが高い銘柄は、借入を増やして自己資本を圧縮しているだけかもしれません。数値の背景を確認せずに買うと、条件に合っていたのに期待と違う、ということが起きます。
- 01STEP 1
事業内容とセグメント構成を確認する
何で儲けている会社かを把握します。これが分からないと、材料の重要度を判断できません。
- 02STEP 2
その数値になっている理由を確認する
PERが低い、ROEが高いといった数値が、一時的な要因によるものでないかを決算資料で確認します。
- 03STEP 3
直近の材料を拾う
決算、業績修正、適時開示を見ます。スクリーニングのデータは更新タイミングが遅れることがあります。
- 04STEP 4
同業他社と並べて比較する
同じ業種の数社と指標を並べます。業種内での相対的な位置が分かって初めて、割安・割高が判断できます。

成長株
05「テンバガー候補リスト」を信じる前に、自分で検証する3ステップ
10倍になる株(テンバガー)を探したい、というのは多くの個人投資家が持つ目標です。ただ、「テンバガー候補◯選」といったリストをそのまま使うのは危険です。誰かが候補として公開した時点で、その情報は多くの人に共有されており、優位性はほとんど残っていません。
有用なのは、リストではなく条件です。過去に大きく上昇した銘柄には、いくつか共通する傾向がありました。時価総額が小さい段階で見つかっていること、売上が継続的に伸びていること、参入障壁のある事業を持っていること、オーナー経営で意思決定が速いこと。これらは条件に落とし込めます。
ただし、これらの条件に該当する銘柄がすべて10倍になるわけではありません。むしろ、大半はそうなりません。小型成長株は業績の変動が大きく、成長が止まった瞬間に大きく売られます。ポートフォリオ全体の中で、失っても致命傷にならない比率に収めることが前提です。
- 01STEP 1
条件で候補を出す
時価総額300億円以下、売上高成長率20%以上を3期連続、営業利益率が改善傾向。この3つで候補を絞ります。
- 02STEP 2
成長の理由を1文で説明できるか確認する
なぜ売上が伸びているのか。市場全体が伸びているのか、シェアを奪っているのか、新規事業なのか。説明できない銘柄は外します。
- 03STEP 3
成長が止まる条件を先に決めておく
「増収率が2四半期連続で10%を下回ったら見直す」など、撤退基準を買う前に決めます。これが最も重要です。
小型成長株は、成長が止まったときの下落幅が非常に大きくなります。買う前に「どうなったら手放すか」を決めておかないと、下落局面で判断ができなくなります。撤退基準の設定は、銘柄選びと同じくらい重要です。

IFAIで確認
IFAIは絞り込みから個別確認までを同じ画面で進められる
IFAIでは、条件で銘柄を絞り込み、そのまま個別の銘柄詳細へ入って業績・指標・ニュース・AIレーティングを確認できます。スクリーニングツールと銘柄情報サイトを行き来する必要がないため、この記事で整理した「絞り込み→4点確認」の流れが途切れません。気になった銘柄はウォッチリストに登録して、決算をまたいで観察できます。
- 条件で候補を絞り込み、そのまま銘柄詳細で中身を確認する
- IFAIレーティングで市況・業績・需給の3軸スコアを横比較する
- 候補をウォッチリストに入れ、決算後の変化を追う
編集・確認情報
- 執筆
- IFAI編集部
- 確認
- 株式会社nicosphere
- 情報確認日
- 2026-08-28
本記事は株式スクリーニングの手法に関する一般的な解説であり、特定銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。記載した条件例や数値は出発点であり、将来の株価や運用成果を予想・保証するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。
IFAIメディアの編集・訂正方針よくある質問
- 株のスクリーニングはどうやってやりますか?
- まず目的を1つに決めます(割安・成長・配当・小型のどれか)。次に、その目的に効く条件を3〜4個だけ設定します。結果が0件なら条件を1つ外し、500件以上なら1つ足して、30〜50件に着地させます。すべての目的で、時価総額と売買代金の下限(流動性フィルター)は入れてください。
- スクリーニングの条件は多いほうがいいですか?
- いいえ。条件を増やすほど良い銘柄が残るわけではありません。条件が多いと0件になるか、条件同士が矛盾して意味のない結果になります。割安の条件と高成長の条件は両立しにくいため、同時には使いません。3〜4個に絞るのが実務的です。
- PER15倍以下という条件は使えますか?
- 全市場一律で使うのは避けてください。PERの適正水準は業種で大きく違い、成長期待の高いIT業種では30倍超が普通、成熟した銀行や商社では10倍前後が普通です。一律で切ると成長企業がすべて除外され、特定業種だけが並ぶ歪んだ結果になります。業種内での相対比較が正しい使い方です。
- PBR1倍未満なら割安ですか?
- 必ずしもそうではありません。PBR1倍未満は「解散価値より株価が低い」状態ですが、業績が悪化し続けている企業や、資産の収益性が低い企業も同じ条件に該当します。市場が将来の価値を低く見積もっている結果である可能性があるため、資産の中身と収益性(ROEなど)をあわせて確認してください。
- テンバガー候補はどう探せばいいですか?
- 公開されている「候補リスト」は、その時点で多くの人に共有されており優位性は残っていません。使うべきはリストではなく条件です。時価総額300億円以下、売上高成長率20%以上を3期連続、営業利益率が改善傾向、で候補を出し、成長の理由を1文で説明できるかを確認します。そして最も重要なのは、買う前に撤退基準(増収率が2四半期連続で10%を下回ったら見直す、など)を決めておくことです。
- スクリーニングで絞り込んだ銘柄はそのまま買っていいですか?
- いいえ。条件に合致したという事実は、その銘柄が良いという意味ではありません。1件ずつ、①何の会社か ②なぜその数値になっているのか(一時的要因ではないか)③直近の材料 ④同業比較、の4点を確認してください。特に②は重要で、特別利益でPERが一時的に低く見えているケースなどが除外できます。
Next Step
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