日本株に広がる慎重論、停戦合意でもアナリストの業績予想が弱気化
業績修正の勢いを示すリビジョン・インデックスのマイナス転換は、日本企業全体の利益成長鈍化を想起させ、市場全体の下押し要因となる。
原油価格の高止まりにより、日本株では企業業績の「リビジョン・インデックス」が昨年7月以来のマイナスに転じ、下方修正の動きが鮮明になっています。中東への原油依存度が高い構造が重石となり、米国株とのパフォーマンス格差拡大やボラティリティの上昇が懸念されるため、決算シーズンに向けた慎重な選別投資が求められます。
米国とイランの2週間の停戦合意を受けても原油価格が高止まりし、決算発表シーズンを迎える日本株市場では企業収益の重しになるとアナリストらは警戒している。株価パフォーマンスは資源輸出国の米国に勝てない状況が続く恐れがある。
ブルームバーグの集計によると、アナリストの業績予想の方向感を示すリビジョン・インデックス(RI)は4月第2週に急低下し、昨年7月以来のマイナスに転じた。予想の下方修正の数が上方修正を上回っていることを示し、低下幅は欧米株より大きい。
中東情勢の緊迫化を受け、原油高によるコスト増の影響が大きい化学などの業種で予想の引き下げが増えている。野村証券は今週、原油価格の高止まりを理由に花王やユニ・チャームなどの業績予想を減額した。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、4月下旬以降に明らかになる企業の業績見通しは「例年以上に保守的」になるとみられ、「アナリストも一定程度の下方修正をせざるを得ない」と指摘。RIはさらに低下していくとの見方を示した。

停戦合意を受け、日経平均株価は開戦直前の2月27日に付けた最高値からの下げ幅の7割超を回復した。ただ、停戦後もホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くなど、原油価格の見通しには不確実性が残る。経済産業省によると、日本は原油の9割超を中東に依存しており、同海峡の混乱が長引けば企業業績や経済への影響は大きくなる。
先行して決算を発表した外食や小売企業の一部では、先行きの不透明感が示された。サイゼリヤは原材料高を理由に通期営業利益予想を下方修正し、株価は9日に14%下落。イオンは2027年2月期の営業利益が過去最高を更新する見通しを示したが、原油高によるエネルギーコストや物流コストへの影響を踏まえ事業環境は引き続き不透明な状況とし、株価は急落した。
米国株に劣後
ボラティリティーの高さも日本株を敬遠する理由となり得る。日中の価格変動実績から算出される日経平均株価の実現ボラティリティーは開戦後から上昇し、9日時点で33と米国株の2倍だ。
ノムラ・シンガポールの須田吉貴シニア・クロスアセット・ストラテジストは、実現ボラティリティーの高まりは相場の不安定さを示唆し、個別株に選別投資する「ストックピッカーにとってはやりにくい」相場と話す。ボラティリティーの高さからリスクを取りにくいことは日本株にとってネガティブ、と話した。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストも、石油の純輸出国である米国はホルムズ海峡封鎖の影響を受けにくいため、米国株は日本株に比べて上昇しやすいと指摘する。短期的には米国株の相対的な強さに賭けるポジション構築を推奨しており、S&P500種株価指数のコール(買う権利)オプションを買い、日経平均のコールを売る戦略を例に挙げた。
もっとも、4月は海外勢の買いが入りやすい季節性があり、短期的には需給が改善する可能性がある。ノムラ・シンガポールの須田氏は、イラン攻撃を受けて欧州勢の米国への不信感は高まったとし、相場が落ち着きを見せれば、ドル資産離れの動きを背景に日本株にも資金が流入すると予想する。
原油高の実体経済への影響はすぐには顕在化しない可能性がある。一方で、為替相場で円安基調が続いていることは、インフレ加速や景気後退への懸念材料だ。イラン戦争開始後、日経平均株価は5%安(9日時点)となっており、S&P500の0.8%安に対してすでにアンダーパフォームしている。
IG証券のマーケットアナリストでシドニーに拠点を置くファビアン・イップ氏は「仮に原油価格が1バレル=100ドルを下回り、80ドル前後で落ち着いたとしても、消費者物価全体には依然として大きな影響を及ぼす」と指摘。日本株が持続的に上昇するかどうかはホルムズ海峡の早期再開にかかっていると話した。
関連セクター