世界遺産・姫路城「二重価格」作戦の勝算 市外2500円で収入倍増、入城者数は2割減
観光資源の収益化とオーバーツーリズム対策の成功例として、レジャー・観光関連銘柄に波及する可能性があるが、一自治体の事例であり市場全体への影響は限定的。
姫路城が導入した二重価格制により、入城者数は前年比約17%減となったものの、料金収入は約2.7億円と前年同期比で倍増しました。観光資源の維持管理費を確保しつつオーバーツーリズムを抑制するモデルケースとして、他自治体や政府による導入検討が加速する可能性があり、観光関連銘柄や地域経済の収益モデル転換に影響を与える注目事例です。
世界遺産・姫路城(兵庫県姫路市)の入城料値上げ後の1カ月間の入城者数が前年同期比で2割弱減少した一方、料金収入は倍増する見込みとなった。姫路市は入城者減少を「想定内」とした上で、オーバーツーリズム(観光公害)に直面する他都市から視察や問い合わせが相次いでいると明かす。観光公害対策や円安を背景に官民で導入が模索されている「二重価格」を巡る先例として注目を集めそうだ。
姫路城では3月から、18歳以上の市民料金を千円のまま据え置き、市民以外を2500円に引き上げる二重価格が導入された。18歳未満は、城に親しむ機会の増加を目的に市民かどうかを問わず無料とした。
導入から1カ月、城を訪れた人に賛否を尋ねた。兵庫県加古川市から訪れた30代女性は「値上げを知らなかったが、2500円は高い」。インド人グループの観光客は「もっと安い方がいい」と不満を漏らした。一方、ドイツから来た60代女性は「文化財の維持にお金がかかるのは理解できる。自分が住む街にも世界遺産はあるが、二重価格は取り入れたらいい」と理解を示した。
導入初月の3月の実績はどうだったのか。姫路市によると、有料の入城者数(速報値)は約14万人で前年同月比で約17%減った。見解を問われた清元秀泰市長は「(減少は)想定内。大きな混乱はなかった」と強調。国内全体で中国人観光客が減少している現状に触れ「値上げや二重価格が影響したかどうかの判断は難しい」と述べた。
注目に値するのが収入への影響だ。3月の料金収入の総額は約2億7000万円に達し、前年同月(約1億3千万円)から倍増した。市は昨年度、城の維持管理や保存修理などに「10年間で280億円が必要」と試算。増収分はこうした費用に充てる方針だ。
手応えもある。清元市長は「同じような歴史遺産を抱える自治体にとっては(二重価格は)大きな課題。他都市からの視察や問い合わせも多い」と話した。
上々の滑り出しとなった姫路城の二重価格。観光問題に詳しい大阪公立大大学院の池田千恵子准教授は取り組みを評価する一方、二重価格の必要性をより分かりやすく明示する重要性にも言及。「持続可能な姫路城の実現のための設定だということを特に海外に向けて伝えることが必要だ」と述べた。
政府は3月に閣議決定した第5次観光立国推進基本計画で、二重価格を公的施設で導入しやすくする指針作りの検討を盛り込んだ。混雑やマナー違反といった観光公害対策のほか観光資源の維持に必要な財源を、二重価格設定による増収で賄う狙いがある。池田氏は「持続可能な観光地経営の視点から、国が主導してビジョンを作ることが求められる」と話した。(小林宏之、西浦健登)
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