「NISA貧乏」は本当か、投資志向の若者たち-複利効果を意識する世代復活
若年層の投資行動の変化を示す構造的なトレンドの解説であり、短期的な市場変動要因ではないが中長期の需給にはポジティブな内容である。
日本の若年層で投資への関心が急激に高まっており、20代の有価証券保有率の上昇やNISA口座数2800万超えなど、「貯蓄から投資へ」の転換が加速しています。消費を削って投資に回す「NISA貧乏」の懸念も指摘されていますが、現預金比率が50%を下回るなど、インフレ環境下で将来の資産形成を優先する若者の行動変容は、日本市場の構造的な転換点として注視すべき動きです。
世界の金融市場が揺れる中で投資家になりたいと考えるのは誰かと問われれば、今や日本の若者たちだと答えるのがふさわしいだろう。
日本人の若者たちはこれまでにないほどリスク資産を受け入れており、その意識の変化に対して、今を楽しむ支出が少な過ぎるのではないかと懸念も出ている。
第一生命保険が毎年実施する「大人になったらなりたいもの」を子どもたちに問いかける調査で、男子高校生のトップ10に今年初めて「投資家」がランクインした。
女子高校生ではトップ10には入らなかったが、若い女性の投資への関心も高まっており、25-29歳では男性よりも有価証券の保有割合が高い。
これは、インフレと資産価格の上昇を一世代ぶりに経験している日本社会において、リスク資産への需要が拡大していることを反映している。ただし、こうした意識の変化には、負の側面もあるのかもしれない。現在の消費を抑え過ぎているのではないかという点だ。
国会で最近、野党議員が片山さつき財務相に対し、いわゆる「NISA貧乏」と呼ばれる状況について質問した。NISA(少額投資非課税制度)は一定の投資について、約20%の金融所得課税を免除する仕組みで、2024年から年間投資上限額が最大360万円に拡大された。
NISA貧乏とは、この非課税制度を最大限に活用するため、若者を中心に所得を過度に投資に回し、他の消費を控えて、日々の生活が苦しくなるという状況を指している。
片山氏がこの傾向に「ショックを受けた」と答弁したことで、国内メディアでもこの問題が広く取り上げられるようになった。20代が投資のために美容や交際費を諦めているというような見出しがその典型だ。
日本は成功を誇示することを好まない国だが、長年取り組みながらも進まなかった「貯蓄から投資へ」の転換という意味で、一つの成果と言える。NISAの口座数はこの6年で倍増し、2800万口座を超え、30代の約3人に1人が保有している。制度拡充のタイミングも良く、日本がマイナス金利を脱却し、インフレが本格化した時期と重なった。
さらに、日本株の上昇局面とも一致し、2024年1月の新NISA開始以降、日経平均株価は60%上昇している。
それでも、NISA貧乏は最近指摘される幾つかの問題の一つに過ぎない。資金の多くが海外の株式市場に流れていることを心配する声もあり、人気の投資信託は国内株ではなく、米S&P500種株価指数や世界株指数に連動するものが中心だ。また、NISAが余裕資金のある人に有利に働き、格差を拡大させるとの意見もある。
若い働き手が現在よりも将来を優先しているのであれば、それは問題だ。消費拡大を求める経済にとってだけではない。20代は自己投資の時期であり、旅行を通じて視野を広げたり、人脈を築いたりすることによって未来の可能性が広がる。
しかし、メディアが取り上げる一部の事例を除けば、非課税枠の拡大によって多くの人が苦しんでいるという見方に筆者は懐疑的だ。
むしろこれは、デフレから脱却しつつある経済が、将来の現金価値が現在より低くなるという感覚に適応していく過程での自然な変化と言える。仮にNISA貧乏が存在するとしても、それは単に非課税枠を使い切れないことへの不安に過ぎない。
異なる価値観
実際、人々は資産形成を優先している。20代以下の持ち家率は過去最高となり、地価や住宅ローン金利の上昇を背景に早期の住宅購入が進んでいる。
2025年末時点で、家計の金融資産に占める現預金の割合は18年ぶりに50%を下回り、より高いリターンを求めて資産配分が変化している。日本証券業協会の調査では、有価証券投資が必要と答えた人の割合は10年足らずでほぼ倍増し、特に20代前半での保有が増加している。
金融知識に自信があると答えた若者は日本では13%、米国は64%と差が開いており、若者の金融リテラシーを不安視する声もあるが、実際のテストでは日米はほぼ同水準だった。若者の行動について、評論家や政治家が過度に心配する必要はないだろう。ミーム株や暗号資産(仮想通貨)、予測市場への投機に走っているわけではない。
NISA貧乏を巡る懸念は、若者が車を買わないといった年長世代が若い世代に対して抱く不満と同様の構図とも言える。オンライン環境で育った世代が異なる価値観を持つという意味で、世界的にも見られる傾向だ。
男子高校生の親世代が日本株の低迷を目にしてきたのに対し、投資家になりたいと考える子どもたちはほぼ一貫した株価上昇を見てきた。平均的な16歳にとって、日経平均株価は生涯で約5倍に上昇しており、S&P500種とあまり変わらない。
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